WEBマーケティングだけで受注に繋がってますか?

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昨今、製造業の部品、機械メーカーや加工業の企業において、WEBマーケティングに取り組む企業が増えた印象を持っております。

製造業界で約10年間マーケティング支援に携わってきた私としては、製造業でもリード獲得において、展示会以外の手法、「SEO対策」や「MAツールの導入」などWEBマーケティングに着手する企業が2019年頃から増加した認識です。

WEBマーケティングが浸透したことで獲得リード(問い合わせや資料ダウンロードなど)が増加し、営業部門が新規営業アプローチを実施しているかと思います。

これらの活動は、果たして上手く受注に繋がっているのでしょうか。

この記事では、筆者に寄せられた相談や実際の体験談を基にWEBマーケティングに取り組んでいる製造業企業がいかにして受注を獲得するのか、どんな対策を打つべきなのかをご紹介できればと思います。

WEBマーケティングに取り組むだけでは受注は遠い・・・

冒頭に記載したWEBマーケティングに取り組んでいる企業が獲得したリードは、主に

  1. 資料ダウンロードやカタログダウンロードなどのコンテンツ
  2. ウェビナーなどのイベント参加申込

の2種類(問い合わせもあるが、今回は除外)に分類できるのではないでしょうか。

これらは営業プロセスの中で、製品の興味関心を獲得し、製品を知ろうとするいわば認知段階です。

そのため自社案件で使えるか検討したり、競合比較したりと、発注に至るまでは遠いところに位置しています。

(一般的な営業プロセスは下図の通り)

そのため、ユーザーが現在どのステージにいて、どんな情報を欲しているかをしっかりと把握しフォローをしない限り、受注・成約につながる確率は極めて低い状態です。

WEBマーケティングを自社の営業プロセスに盛り込んだだけで、BtoBマーケティングを展開している認識でいるかもしれませんが、実は営業用の単なるアタックリストを生産するセールスマーケティングを行っているだけにしか過ぎません。

そのため、リード獲得がゴールとなってしまい、案件化や受注までの道が非常に遠い。結果として獲得したリードからは、受注が生まれず、やるだけ無駄(費用対効果が低い)という評価がされてしまいます。

このような状態が続くと、日本の製造業ではまだまだ「マーケティング」が定着しません

なぜこのような事態が起きるのか

昨今、マーケティングオートメーション(MA)ツールなどのSaasビジネスの積極的な展開により、製造業界でMAツールを活用する企業が増加しています。

彼らが展開するビジネスは、自社のツールを使用してもらうためにホワイトペーパーやSEO対策・オンライン広告・ウェビナー等で集客を行い、リードを獲得する獲得したリードをMAツールを活用し、定期的にメール配信を行う事で顕在顧客をスコアリング管理し、スコアの高いユーザーへアポイント取得を行う。最後は営業マンが刈り取りを実施します。

マーケティング施策としては非常によくできていると思います。展開している施策はどれも標準化されており、誰が実施しても標準的な結果が出せるからです。もちろん一定水準まで教育は必要となります。

問題なのは、MAツール導入が目的となってしまっている点ではないでしょうか。

本来は、受注獲得がゴールですが、MAツール導入部門と受注責任部門が別であるため、獲得したリードに対し的確にユーザーを育成していくシナリオが存在しません。

さらに営業部門が求めるリードとの間にミスマッチが発生します。

上記のようなケースが多く存在するため、獲得リードは増えるが、案件化につながらないリードばかりになってしまいます。

例えば、自動車部品企業を例にとって考えてみましょう。

自動車工業会会員企業は、約15社(トヨタ自動車やマツダなど)。一方で自動車部品工業会は、約460社(デンソーやNOKなど)。1つの会社で工業製品は完成せず、多くの協力会社が存在します。

また、トヨタ自動車でも国内工場複数箇所で自動車部品(エンジンや駆動関連やシャシーなど)を製造し、部品が完成したら、自動車組み立て工場で組み立て完成となります。その中で、多くの職種が存在し、それぞれの部門で製品選定における優先度が異なります。

例えば、「研究・製品開発設計関連」だと短納期が好まれます。一方で「製造部門関連」は計画生産の為、品質第一で価格は二の次。また「購買部門」は品質と価格重視です。

このように自動車部品メーカーのターゲットとなる職種によって製品選定を行うポイントが異なります。

ターゲットユーザーが所属する部署がどこなのか、必要としている情報が何かをしっかりと考え、部分最適ではなく全体最適化(受注までをしっかりと考える)を意識しながらシナリオを構築する必要があります。

対策

施策を展開する際に自社で獲得したい案件が具体的にどのような案件なのか(例えば、次世代の家電製品におけるマグネットセンサー利用、電気自動車における駆動系部品内のセンサーなど)、その案件を獲得するためにターゲット業種と職種は誰なのか。

ターゲットユーザーはどのように製品選定を行うのか。など、ターゲットに対する深堀を徹底的に実施する事が一番の対策です。

これらの情報を顧客育成のシナリオに落とし込み、顧客にどんな情報を発信すべきなのかを考え、そこから制作物に落とし込むアプローチが最短距離だと思います。

例えば、部品メーカーの新製品を売り込む場合を例に挙げて考えてみたいと思います。

GOALは、新製品の売上獲得。市場にまだ認知されていない製品を購入してもらうためには、ステップとして以下の流れが一般的です。

  1. 認知獲得
  2. 興味関心
  3. 比較検討
  4. 稟議
  5. 試作実施
  6. 評価
  7. 量産化

まずはポジティブな「認知獲得」をいかにして獲得するかが重要です。なぜなら人は、よく知らない企業が提供する製品を購入したいと感じないからです。

定期的に情報を発信し、何度も接触を図ることで好感を生み、自然と認知が高まり興味が湧いてきます。

そのために、提供する製品がユーザーの抱えているどのような課題をどのような方法で解決してくれるのか、従来製品と何が違うのか。などを訴求する。

次に「興味関心」を獲得するためには、ユーザー毎に抱えている課題が異なるため、ユーザーの置かれている状況を理解し、その内容に即した製品や技術コンテンツ、事例などをユーザーに適した形で訴求するステップが必要になります。

また、WEBマーケティングだけでは伝えきれない部分は、しっかりと営業メンバーが継続的にフォローすることが重要になります。最近インサイドセールスがこの部分を担う傾向にあります。

これらをクリアすることで初めて、ユーザーの「比較検討」土台に挙げてもらえるようになります。比較検討では、ユーザーが抱えている案件に対し、「品質」「納期」「価格」「付加サービス」の軸で検討されることが多い傾向にあります。

価格も重要ですが、最終的に量産化するため、量産時の納品品質を気にされるユーザーもいるため、この評価軸でしっかりと資料を準備し、営業メンバーがフォローすることが重要です。

以降のステップでは、社内稟議・試作実施・評価・量産採用と試作品の部品リストにスペックインすることが出来れば、量産採用に向けて準備が整うのです。

このように顧客接点の入口は、WEBですが、きめ細やかな情報提供やフォローを実施することが非常に重要になります。もちろん、すべてを営業メンバーがやるのではなく、自動化できる部分、例えば継続的な情報提供はMAツールを活用し、営業メンバーに渡すリスト精度を高める取り組みも必要になります。

まとめ

製造業は、日本の高度経済成長を牽引した業界であり、今なお、営業部門が非常に強く「マーケティング」という言葉が敬遠されがちだと感じております。

しかし新型コロナウイルスの流行により、人との接触が禁じられた2019年頃からWEBマーケティングやMAツールが大きく普及しました。

製造業にマーケティングが根付く可能性の第一歩と考え、自社の顧客が誰なのか、彼らがどんな課題を抱えているのか。彼らが購買行動を起こすポイントは何かを今一度検討し、実務に生かしてもらえれば幸いです。

執筆者
製造業マーケター 古澤 卓(ふるさわ すぐる)
大学卒業後、事業会社にて営業企画やマーケティング部門に従事。ものづくりの楽しさと業界発展に貢献したく製造業大手生産財コマース企業にて「メカニカル部品」を中心にマーケティング戦略策定から施策実行・分析業務に従事。現在は、製造業に特化したセールスマーケターとして、加工・部品・素材メーカーなどマーケティング戦略策定からデジタルマーケティング実行分析を支援しております。得意領域:事業・マーケティング戦略策定、SEO・メールマーケティング、インサイドセールス等のシナリオ設計、データビジュアライゼーション

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